奇特な世界へようこそ~僕の思考回路~

僕ことURAKIが綴る目眩く思考・嗜好・そして志向の世界へようこそ。貴方にニッチな体験と出会いをお届けする そんな雑記をご賞味下さいm(_ _)m

ショートショートの天才~星新一の魅力~


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~はじめに~

今回の記事では、幾つかの映画や小説に関して大々的なネタバレを含みます。気にされる方は閲読されないことをお薦めします。

 

時にふと、新しい何かを始めたくなる。そんな衝動に駆られることがあります。

とくに二十代の頃というのは、社会人として大分慣れてはきたけれど、未だ自分に足りない何かを感じてみたり、それで新しいこと、未知なことに挑戦したくなる、、そんな気持ちは少なからず皆さんある(あった)んじゃないかなぁと思うわけですが、、

巷では近年「自分探し」やら「自分磨き」なんてよく聞きますけど、つまりそういうことなんでしょう などとくだらないことを考えていたら思いついたのが今回のお話

 

かくいう僕も、自分磨きなどと言える程のことでもないのですが、一時期「意識して映画を観に行く」ようにしていました。

そう、文字通り、映画館へ映画を観にいく。但し頻繁に

ただそれだけのことです。

 

そもそも田舎なのもあり子供の頃から独りで映画を観にいくという習慣がなく、いつも家族とでしたし 大学時代も数えるほどしか映画館へ足を運ばなかった

そんな今までの自分の生活の中で「当たり前」ではなかったことを日常に採り入れてみよう そうしたら何かしら発見があるかも などと 今思えば半端な理由で始めたのでした。

別に映画でなくてもよかったんですよね

よく考えたら 

 

閑話休題

 

まあ、しかしその約二年間は、おかげで今までの人生で一番映画を堪能することになりまして 

大日本人」※1 を日に三回観にいったのは、今となっては謎の思い出。

恐らく、あの松ちゃんがメガホン執った(おまけに主役まで演った)初作品だけに、そこから何かしら必至に読み取ろうとしての行動だったのかも知れません、、

他にも普段観ないようなファンタジーからラブコメまであらゆる旬映画をチェックしていったわけですが、そんな中に「イキガミ」がありました。

ご存じの方もいるかもしれませんが、マンガ原作を実写化した映画です。以前の記事で言及していますが※2 あまり二次元創作の実写化には乗り気でないのですが、今回はまず原作を知らなかったこと、それから当時ライアゲーム等で注目を集めていた松田翔太主演とあって、まあ観てみる価値はあるでしょうぐらいのノリで鑑賞したのでした。

 

内容としては、「国家治安維持法」なる法律が存在する社会で、国民皆、就学時に義務づけられた予防接種 しかし、その中にはごく僅かの確率でカプセル状の時限爆弾?が仕込んであり、それが予め設定された日時(大人になってからのある日)に作動。つまり、運悪くそのロシアンルーレットを引き当ててしまった 人間はこの時点で「いつ死ぬか」が決定してしまうわけです。

これは死の恐怖を知ることで、生命の価値を考えさせるという理由のために行われるわけですが、そうした皆の代表として奇しくも犠牲となる若者に、「その時」を宣告しにいくのが、松田翔太演じる主人公なのです。

そう、犠牲者たちは、その直前までその事実を知らされていないのです。(まあ、あたりまえですよね もし知らされてたら絶望に苛まれ、とても「その時」まで生き耐えられないでしょう)

突然、国家の刺客から死の24時間前に死の宣告状「イキガミ」をつきつけられるわけです。 但し代わりにその24時間は自由に使い放題のカード(金)を渡されて

その死の宣告を受けた若者の残りの人生(つまり1日)を描いた作品なのでした。

 

中々、興味深く面白いと思いました。

生命と死に纏わる話はやはり人を惹きつけるものがありますしね 

しかしこれで話は終わりませんでした。

 

その後暫くして、何気なくネットで目に入ってきたニュース 

そこには、「イキガミ」の内容がある作家の作品の内容に酷似していると指摘があった旨が書かれていました。

それも、どうやら僕が観た「実写映画」ではなく、原作連載当初にあった話らしく、、、まあ 恐らくこの「映画公開」のタイミングで掘り起こしてきたニュースだったのでしょう。

 

さて指摘があったのは、日本文藝家協会からだそうで、その作家の名前は「星新一

ん?どこかで聞いたことあるなぁ

 

僕の灰色の脳細胞※3 が見過ごすわけがありません。

そう、あれは小学五年生の国語の教科書

「おみやげ」

と題されたとても短い話。

以下、自分なりに概要まとめてみました。

 

まだ人類が誕生してすらいない遙か昔の地球を訪れたフロル星人※4 は、今後、誕生するであろう人類のために、おみやげを置いていくことにしました。宇宙船の設計図、若返りの薬等々 それは銀色のタマゴ型カプセルに入れて砂漠に埋められその時を待ちました。いつか文明を築いた人類がこのカプセルを空ける日まで、、

果たしてその日は訪れたのです。

砂漠での核実験という形で、、

 

この短かな話の作者が星新一氏だったことを思い出したのです。

 

子供ながらに、巧いなぁと感じたのを覚えています。自らが作り上げた文明の「負」により、もっと有益な文明の手がかりを 「無」に返してしまうという手痛い事態をさらりと皮肉で綴るこのセンス。 そりゃあ印象に残っているわけです。

しかし、実はそれよりも印象に残っていたのはこの「フロル星人」 その挿絵で描かれる何とも間抜けな姿が 当時ツボに入り、、友人と一緒になって「フロル星人似」の後輩を弄っていたのは懐かしい思い出、、(p_-)

 

閑話休題

 

果たして この「盗作疑惑」を機に星新一に興味を持った僕は、早速 氏の著書を読み漁るようになりました。

 

皆さんは「ショートショート」という言葉を知っていますか?

氏の書くような「短くて不思議な短編」のことを指す総称のようです。

 

そう、氏の著書の大半は「短編であるショートショートをまとめたもの」だったりするのです。

氏は、その生涯で1000編を超えるショートショートを執筆したそうですから、もうまさにショートショートスペシャリストですよね。

 

さて、そんな氏のショートショートの中には、先述の「おみやげ」宜しく、パンチの効いたブラックユーモア作品もあれば、社会風刺、それから氏が元来好きだったというSF 、道徳的な話など 実にその内容は多岐に渡ります。

 

因みに、肝心の「疑惑」の元となった「生活維持省」という作品ですが、犯罪も公害もない、健康で文化的そんな時代「人口の増減を均等に保つため、選別された人間の命を奪っていく」というコンセプト。肝心の殺害方法がこちらはダイレクトつまり、イキガミでいうところの配達人(政府役人)が直接手を下すあたりは差異は感じますが全体の構成としては似ているといえるのかも 但し、この問題ではイキガミサイドが「製作段階でこの作品の存在を知らなかった」と主張していますからね  まあ、僕にはよくわかりませんが とりあえず 気になった方は是非ご自分で読まれては如何でしょうか。

 

この、「生活維持省」のように「生と死」に関わる話も、星新一ショートショートの目玉といえるかもしれません。

 

このテーマだけでも好きな話は沢山ありますが、この話はまた近いうちに改めて 綴りたいと思います。

では、一言では紹介しきれない星新一ショートショートの魅力 つづきはまた別記にて 期待しながらお待ちください。

 

※1 ダウンタウン松本人志の初監督映画 なかなか特撮(*_*) なんとか理解しようと頑張りました。いい思い出

一応こちら

 


 
※2  過去記事「アニメじゃない」参照 あまり読まれてないようですが本人気に入ってる記事の一つですのでこの機にm(_ _)m

 

※3 アガサ・クリスティの生んだ名探偵ポアロの頭脳を指して 本来は「鋭い洞察力」の意味で使用されるため、当記事での使い方は誤り ただ雰囲気的に使ってみたかったんですm(_ _)m 悪しからず

 

 

※4 まず、今回紹介した「おみやげ」及び「生活維持省」を収録した短編集は、こちらからどうぞ

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

 

 

 

尚、この短編集収録の「おみやげ」には、あの国語の教科書の挿絵は載っていません。あれは教科書オリジナルだったのだろうか。知っている方いたらコメント求(嘘)